地理的表示とは
地理的表示とは
地理的表示(GI:Geographical Indication)とは、その地域ならではの特性を持つ産品の名称のことです(注1)。
例えば、市田柿、神戸ビーフ、越前がに、が挙げられます。
その商品が生産された地域のみを示す「原産地表示」とは異なります。
下の図に示すように、その産品に独特の魅力や社会的評価などの特性があり、しかもその産品の特性が、地域で長年培われてきた特別な生産方法や、気候・土壌、伝統・文化などの地域の特徴から生みだされている、そんな特別な産品の名称が「地理的表示」なのです。
注1:農林水産省webページ「地理的表⽰(GI)保護制度」では、地理的表示について「その地域ならではの⾃然的、⼈⽂的、社会的な要因・環境の中で⻑年育まれてきた品質、社会的評価等の特性を有する産品の名称」と説明しています。
地理的表示(GI)保護制度とは
生産者は、その地域ならではの特性を持つ産品を販売する際に地理的表示を使うことにより、その産品の価値を消費者に伝えることができます。消費者は地理的表示をみて、例えば「この商品は、あの地域の気候を活かして栽培されているので、格別に香りがよくおいしい」「この商品は、あの地域の伝統的な方法で製造されるので、特別な風味がある」と期待して購入することになります。
しかしもし、本来の産品とは異なる生産地・生産方法の商品や、本来の特性をもたない商品にまで、同じ名称が使われ販売されたとしたら、消費者は期待を裏切られてしまいます。本来の地域の生産者たちにとっても大きな損失です。
そこで、地理的表示(GI)を、生産地・特性・生産方法等の基準とともに登録し、保護するのが地理的表示(GI)保護制度です。登録された地理的表示を使用できるのは登録した基準を満たす商品だけなので、消費者は信頼して商品を選択することができます。
日本の地理的表示法
日本では、「特定農林水産物等の名称の保護に関する法律」(略称:地理的表示法。2014(平成26)年6月に成立、翌年6月より施行)により、農林水産物・食品等の地理的表示が登録されています。仮に登録された基準を満たさない商品に地理的表示が使用されている場合には、⾏政が不正として取り締まり、登録された地理的表示を保護します。
参考:農林水産省webサイト「地理的表示(GI)保護制度」の「地理的表示法とは」
なお酒類のGI保護制度は、酒税法に基づく告示(2015年(平成27年)10月30日国税庁告示第19号)によって運営されています。
GIマーク
日本の地理的表示法に基づいて登録された産品には、地理的表示と併せてGIマークを表示することができます。つまり、GIマークは本物の証、と言えます。
なお2022(令和4)年11月から、GI産品を原材料とする製品にも、一定のルールを満たすことにより、GIマークを表示することができるようになりました。
GI保護制度は国際的な広がりを持っている
地理的表示(GI)保護制度は、もともとフランスやイタリアなど欧州で生まれた制度です。欧州では、チーズ、ハム、ワインなどさまざまな産品で多数の地理的表示が登録され、保護されています。パルミジャーノ・レジャーノやシャンパンも地理的表示です。
現在100か国を超える国でこのGI保護制度が導入されています。
制度は通常、国ごと(EUの場合はEU全体で1つの制度)に設けられます。その一方で、魅力的な産品は世界に流通するので、各国の制度の枠を超えて地理的表示を保護する仕組みが必要です。
そこで、国どうしが協定を結び、相手国が登録している地理的表示を自国内で保護するかわりに、自国が登録している地理的表示を相手国内で保護してもらう仕組み(相互保護)が整えられつつあります。例えば日本とEUは日EU経済連携協定を締結しています(2019年2月発効)が、この中には、指定された地理的表示の相互保護が盛り込まれています。